特設巡洋艦 愛国丸

I.J.N. auxiratory cruiser aikokumaru
貴婦人に化けて商船を襲う狩猟者


 <使用キット>
 ピットロード 「愛国丸1941」

 <実艦解説>
 「愛国丸」は、大阪商船の東アフリカ経由南米航路向けの貨客船「報国丸」級の二番船として建造されました。和辻博士の設計による優雅な船体は、豪華な一等船室や公室と、折りたたみベットで増床できる南米への移民向けの三等船室をそなえた新鋭船でした。
 しかしながら、政府の優秀船舶建造助成施設を利用した本船は、当初から戦時下においては特設巡洋艦になる予定でした。そして、戦雲高まる中、愛国丸は竣工の翌日に海軍に徴用され、一度も民間航路に就くことはありませんでした。

 ■極秘に敵哨戒線を突破せよ!
 海上護衛戦という概念が無かったと言われる日本海軍ですが、通商破壊による後方攪乱効果は早期から認めていました。
 そこで、開戦前に「報国丸」、「愛国丸」で編成された第24戦隊は極秘に出港。ニュージーランドの北方にまではるばる出撃させ、開戦と同時の米豪航路を攻撃を計画します。
 開戦間もない1941年12月13日、「報国丸」と「愛国丸」は、ニュージーランドへ向かう米貨物船「セント・ヴィンセント」を停船させ撃沈します。
 順調に見えた米豪航路攻撃ですが、戦果は以降1隻にとどまり、2月4日に中止になります。この航路の交通量の少なさもありますが、通商破壊作戦は長期の作戦が必要だったと後年批判の対象になっているようです。

 ■インド洋での凱歌と終焉
 その後、二隻は第六艦隊の第八潜水戦隊に移動。インド洋で、潜水艦への補給を行いながら通商破壊を行うことになります。
 1942年5月9日には、オランダタンカー「ゼノタ」を鹵獲。回航された「ゼノタ」は、海軍の給油艦「大瀬」になります。その後、モザンピーク海峡まで進出した2隻は、1隻撃沈、1隻鹵獲の戦果をあげます。
 インド洋での作戦は順調に見えましたが、11月11日に、「報国丸」がオランダタンカー「オンディーナ」攻撃中に沈んだことにより中止になります。

 ■今なお…
 「愛国丸」は、その後特設巡洋艦としての任を解かれ、武装の大半を撤去して特設輸送船になります。20ノットを越える高速輸送船として重宝されましたが、1944年2月17日のトラック空襲で、積荷の弾薬が誘爆して沈みます。トラック環礁には、今なお英霊とともに眠る船首を喪失した「愛国丸」の姿があります。
 



 <模型解説>
 ピットロードからでた新作キットを、一週間程度で完成させてみました。
 最近のピットロードの大型艦キットと異なり、トランペッターと提携したキットではないです。そのため、他のピットロード製品とは一線を画す出来になっています。甲板のマスキングを不要にするパーツ構成。仮組みなしで組む上がる精度の高さ。ナノドレッドにせまる、繊細な出来の装備品。
 …パーツ構成からして、「報国丸」や商船Verも考慮に入っているようなので、そちらも期待できます。
 塗装は、明灰白色にジャーマングレーで迷彩しました。キットの指示では、軍艦色での迷彩ですが、セレター軍港で撮影された写真を見るとコントラストが強いように思えたので。

 
 ■フルハル化
 パーツの合いがいいので、簡単にフルハル化できます。スクリューシャフト周りの再現度に注目























■5500t級(「多摩」)との比較
 元が貨客船ながら、「愛国丸」の武装は5500t級軽巡に匹敵するものでした。




















■特設潜水母艦「平安丸」と
 同じ貨客船ながら、和辻博士設計の「愛国丸」の優雅な設計が分かります。また、二隻ともトラック空襲で沈んでいます。

















 
■ノーデンフェルト世界の「愛国丸」
 インド洋で船団狩りを行う「ヴィータ」と遭遇。船団を逃がすため盾に…。

 















 ■要目
 ■排水量:10,437t(基)
 ■全長:160.8m
 ■全幅:20.2m
 ■速力:20.9kt
 ■搭載機:2機
 ■兵装:50口径14cm単装砲8基、13mm連装機銃2基、53cm連装魚雷発射管2基(1942年時)

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