駆逐艦 霞
I.J.N Kasumi
水雷戦隊の隆盛を見届けた戦巫女
<使用キット>
PT社満潮
<実艦解説>
「朝潮」型の9番艦として、昭和14年4月28日に竣工。
第二次大戦が始まると、文字通りの東奔西走の日々になります。
開戦初日は、南雲機動部隊の一員としてハワイ奇襲に参加。
その後、昭和17年1月にはニューギニアやマレー方面に転戦。5月のミッドウエー作戦に参加するまで、各所の攻略支援をし、武装商船2隻を撃沈。
ミッドウエー作戦の後は、今度は極寒のアリューシャン列島キスカへ。ここで、雷撃により艦橋全部より船体を切断する損傷を受けますが脱出に成功。
修理後も、北、南の両太平洋を転戦します。
■歴戦艦「霞」に「幸運の提督」赴任
そして、昭和19になるとレイテ沖海戦に参加。この時、一水戦の旗艦「阿武隈」が沈み、以降は一水戦の旗艦になります。司令官として乗り込んできたのは、キスカ撤退戦で奇跡をみせた「ヒゲのショーフク」こと木村昌福少将。
名前からして、縁起が良さそうな木村少将は、常に幸運を呼び込みます。
まず第二次多号作戦での、レイテ島強行輸送を成功させます。この時、輸送船が沈んだ時、旗艦たる「霞」が真っ先に救助にあたったそうです。(普通、旗艦自らが敵中での救助という危険な行為はしません。)
次の第四次多号作戦では、重火器の揚陸には失敗するものの、「霞」は無傷で生還。
そして、昭和19年12月26日。今回の、「その時」が来ます。
比島の首都マニラからも、ほど近いミンドロ島に米軍が上陸。
その米軍に対し、夜襲をかけるように命令が下ります。二ヶ月前、日本海軍の総力をあげても出来なかった敵上陸地点への夜襲です。
にもかかわらず、参加するのは、重巡「足柄」、軽巡「大淀」、駆逐艦「霞」、「朝霜」、「清霜」、「かや」、「杉」、「樫」の寄せ集め8隻。
無謀にしか見えない命令を下すほど、当時の日本海軍の窮状が伺えます。
そして、この作戦には「霞」より大型で指揮能力に優れた巡洋艦があるにも関わらず、木村少将は「霞」を旗艦にします。
戦後、戦史研究家の木俣滋郎氏のインタビューに対して、木村少将はこう答えます。
「どうして(旗艦を)駆逐艦にしたんですか?」
「だって君、僕は駆逐艦乗りだよ」
「僕はヒョロ長い水雷艇の時代から水雷屋なんだ」
このセリフに木村少将の、ド根性を見る思いです。
■「霞」を戦闘に、ミンドロ島に突入する7隻
「清霜」は往路の空襲で、早くも沈没します。木村少将は、この時は「清霜」を放置します。ぐずぐずじていると、突入が失敗するからです。
そして、この隊形のままミンドロ島に突入します。
米軍は、台風のため強力な機動部隊が退避中だったこと。戦艦「大和」がいると誤認した事などから大パニックになります。
このあたり、幸運提督たる木村少将の面目躍如だと思います。
直前に輸送船団は逃亡していたもの、敵輸送船1隻を雷撃で撃沈、数隻を撃破。地上部隊も砲撃し、米軍を恐怖させます。
帰路では、またしても旗艦の「霞」が先頭にたって危険な敵中での、「清霜」乗員救助を行います。
司令官自らが、、危険を冒し部下を助ける。この人のためなら死ねると、救助された乗員は涙したと伝えられます。
この作戦は、日本海軍が戦闘を含む作戦で成功させた最後の作戦となります。同時に、日本の駆逐艦が敵艦に魚雷を命中させた最後の戦いになります。
■霞と日本水雷戦隊の最期
昭和20年4月7日。
有名な「大和」の沖縄特攻に、護衛として参加。
巧みに敵航空攻撃を回避しますが、ついに直撃弾2発。航行不能となったため、僚艦「冬月」に乗員が移譲して雷撃処分されます。
この時、「霞」乗員はベストをつくした満足感からか、胸をはって乗り込んできたそうです。
そして、この直後の4月20日に第二水雷戦隊解散。「霞」の沈没とともに、栄光の水雷戦隊は永遠に姿を消しました。
<模型解説>
PT社から映画「男たちの大和」に合わせて、「霞」そのものが発売されましたが若干高いので「満潮」を使用。
煙突の表示と単装機銃を写真のようにするだけで、簡単に「霞」が作れます。PT社の駆逐艦では初期作なので、第二煙突周囲の吸気塔など表現が甘い所はありますが気になる程では無いと思います。
ただし、菊水マークは「磯風」以外の艦には記入されていないので注意が必要です。
■前方より
艦橋前方の機銃には防弾板を付けました。
本来なら、艦橋前面にも防弾板がありますが省略。
それに、こちらの方がシャープかと(言い逃れ)
■後方より
単装機銃の配置は、他艦からの推測。ですが、装備数からすると大きく違わないと思います。
■要目
■排水量:1,961t(基)
■全長:118m
■全幅:10,4m
■出力:50,000馬力
■速力:36,5ノット
■乗員:230名
■武装:12,7センチ連装砲2基、61センチ4連装魚雷発射管2基、25ミリ機銃3連装5基、同単装12基、爆雷投射機1基、投下軌条2基
■参考文献
「特攻大和艦隊」阿部三郎著 光人社NF文庫 2005年
「第二水雷戦隊突入す」木俣滋郎著 光人社NF文庫 2003年
両方とも、駆逐艦好きならオススメの良書です。