駆逐艦 アントニオ・ダ・ノリ
R.M. Antonio da nori
前線に立ち続けた「航海者」
<使用キット>
レジア・マリーナ社 ジョバンニ・ダ・ヴェラザーノ
<実艦解説>
「アントニオ・ダ・ノリ」は、1929年12月29日に偵察艦として竣工しました。フランスの大型駆逐艦シャッカル級に対抗し、イタリアの従来の駆逐艦より大型・重武装だったためです。このクラスは、航海家の名がつけられたため、ナヴィガトリ(航海者)級と呼ばれました。
フランスの大型駆逐艦より多少小型だったため、復原性、凌波性に問題があり、30年代に姉妹艦と同様に性能改善工事を行いました。上構の縮小、艦首形状をクリッパー型にするなどの工事です。
■戦乱の海の「航海者」
ナヴィガトリ級は二次大戦開戦時にはやや旧式化しており、新鋭のソルダディ級の配備が進んでいたこともあって、主力艦隊の護衛につくことは少なかったようです。
しかしながら、1940年7月9日のカラブリア沖海戦には、「アントニオ・ダ・ノリ」を含むナヴィガトリ級の多くが参加しています。
この海戦は、リビア向け船団護送の帰途のカンピオーニ提督率いるイタリア艦隊と、護送船団を率いた英地中海艦隊の衝突です。イタリア側は、戦艦2隻、重巡6隻、軽巡8隻が主力。英側も戦艦3隻、空母「イーグル」を主力。双方ともに大規模な編成でしたが、空襲の応酬と遠距離砲戦のみで終わりました。イタリア側は戦艦「ジュリオ・チェザーレ」、重巡「ボルツァーノ」が損傷する程度で軽微な損害でした。
■散りゆく「航海者」
イタリア海軍は、北アフリカ戦線やマルタ島への補給路確保のために、英地中海艦隊と衝突を繰り返します。ナヴィガトリ級は、小規模な艦隊の旗艦として使われることもありました。
1941年4月15日に船団旗艦として英駆逐艦隊と交戦したのもナヴィガトリ級の1艦の「ルカ・タリゴ」でした。輸送船5隻、駆逐艦3隻からなるトリポリ向け船団は、トライバル級を含む英駆逐艦隊4隻の前に全滅しますが、「ルカ・タリゴ」はトライバル級「モホーク」を撃沈する奮戦をしています。
このような奮戦もありましたが、優勢な英側の海空戦力の前にイタリアの駆逐艦戦力は急速に消耗していきます。
ナヴィガトリ級も、魚雷発射管を降ろして対空砲を増強したりして対抗しますが、続々と戦没。
「アントニオ・ダ・ノリ」も、イタリア休戦までは生き抜いたものの、43年9月9日に触雷し、翌日に沈んでいます。一説によると、国王を国外に逃亡させるための準備中だったということです。
<模型解説>
戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト」の竣工に伴い、イタリア艦隊を編成したくなり、2009年7月のワンフェスで入手。提督の決断4で見慣れたクラスだったというのもあります。
本場イタリアのレジア・マリーナ社のキットだけあって説明書には、各艦の武装変遷が載っていました。末期戦好きとしては、対空兵装強化後を作りたかったので、43年まで生き残った「アントニオ・ダ・ノリ」にしました。
モールドは繊細で、船体の歪みもない良キットでした。
レジンキットゆえに、マストや主砲は使い物にならなかったので、0.5ミリ真鍮線を主体に再生。錨鎖は一度削り取り、対空識別を塗装後に極細チェーンで再現しました。
船体はクレオスの明灰白色と軍艦色。甲板は、デッキブルーと軍艦色を混ぜた色です。
■ナヴィガトリ級と朝潮級
小型艦が多いイタリア駆逐艦の中では大型のナヴィガトリ級ですが、日本の朝潮級と比べるとやや弱武装。しかし、日本と違い魚雷を降ろして対空火器の増備をしているのが面白いです。
■要目
■排水量:1,900t(基)
■全長:107.3m
■全幅:10.2m
■出力:50,000馬力
■速力:38ノット
■乗員:平時173名、戦時224
■武装:50口径12cm連装砲3基、53.3cm3連装魚雷発射管1基、54口径37mm高射機関砲2基、65口径2cm機銃4基(アントニオ・ダ・ノリ.1942年)