戦艦 ペンシルヴェニア

U.S.S Pennsylvania
太平洋艦隊旗艦の日陰人生


 <使用キット>
 ドラゴン社 ペンシルヴェニア1944

 <実艦解説>
 「ペンシルヴェニア」は、米戦艦として初めて主砲が全て3連装砲になった艦として、1916年6月に竣工しました。その年の10月には大西洋艦隊旗艦になりました。しかし、翌年から米国が参加した第一次世界大戦において、英国に派遣されることはありませんでした。重油専焼の機関に必要な給油艦の余裕が無かったためです。
 その後、1921年からは太平洋艦隊の旗艦となりました。
 1929〜31年にかけて近代化改装され、籠マストを三脚に。副砲の一部廃止、高角砲の搭載、缶の換装などを行っています。
 同時期の日本戦艦と比べると、やや見劣りする状態で、「ペンシルヴェニア」は太平洋戦争に参加します。

 ■日陰人生の始まり
 1941年12月7日、運命の日。「ペンシルヴェニア」は、真珠湾の乾ドックにいました。日本空母機動部隊による真珠湾攻撃において、「ペンシルヴェニア」は他の戦艦群と離れた場所に居たことが幸いし、小破で切り抜けます。と、同時に姉妹艦「アリゾナ」が悲劇的な最後で知名度を上げたのに対し、早くも影の薄さを出し始めます。
 損害の軽かった「ペンシルヴェニア」は、修理が終わり次第、アメリカ本土沿岸での哨戒任務に就きます。しかし、日本機動部隊と死闘を繰り広げた空母任務部隊と異なり、交戦の機会はありませんでした。

 ■リニューアルするも…
 日本軍がアメリカ本土を攻撃する可能性が減少した1942年10月から、「ペンシルヴェニア」は近代化改装を始めます。
 しかしながら、コロラド級ほど価値が高いわけでも、他の真珠湾攻撃で損傷した戦艦ほどダメージが大きい訳でもなかった「ペンシルヴェニア」は、どこか中途半端な改装となってます。すなわち、対空火器は増強されたものの、三脚マストをはじめとする艦上構造物は従来通りの場所が残ります。
 戦列に復帰した後の戦歴も上陸支援の艦砲射撃が主で、重要ですが目立ちません。
 唯一の花道となった、1944年10月のスリガオ海峡海戦でも活躍できませんでした。
 交戦相手たる西村艦隊は、駆逐艦隊の雷撃で戦艦「扶桑」、駆逐艦3隻が脱落。いわゆる「真珠湾復仇組」の戦艦群が射撃を開始する頃には、残る戦艦「山城」も雷撃で大破状態でした。さらに、「ペンシルヴェニア」はレーダー故障で一発も主砲を発射していません。…たとえ、射撃可能でも西村艦隊を壊滅させたのは、駆逐艦の肉薄波状雷撃なのですが。

 ■数奇な最期
 「ペンシルヴェニア」は、その後も上陸支援に当たり、1945年4月からは沖縄本島への艦砲射撃を行っています。沖縄方面での日本軍の抵抗は強く、特攻を主体とする米艦隊への航空攻撃は熾烈を極めます。
 沖縄での組織的抵抗も終了した8月12日の夜半。此の頃には日本軍の航空攻撃が下火になり、沖縄中城湾にて停泊していた「ペンシルヴェニア」は、突如雷撃を艦尾に受け大破します。雷撃を行ったのは、異説もありますが海軍931航空隊の艦上攻撃機「天山」4機のようです。海軍931航空隊は、元々は海上護衛総隊の下で「大鷹」「雲鷹」「神鷹」「海鷹」などの空母に搭載されて対潜哨戒を行う部隊でした。レイテ沖海戦後も「海鷹」に乗艦しての船団上空での対潜哨戒を行っているので、最後に活動した「母艦航空隊」と言えなくもありません。
 すなわち、太平洋戦争の最初と最後で日本海軍の空母機に攻撃された数奇な戦艦となったのです。
 そして、二次大戦後は1946年7月に行われた原爆実験「クロスロード作戦」に参加。原爆の爆心地から離れていた事もあり、このときは生き残りますが、1948年になって大戦中に受けた艦尾の古傷から浸水して沈没しました。
 …強引な見方をとれば、日本海軍が最後に撃沈した戦艦と言えるかもしれません。

            

            

 <模型解説>
 ドラゴンから発売されたフルハルキット「ペンシルヴェニア1944」のWLより上のみをストレートに組み上げました。
 大戦中の浮きドック入りした写真を参考に艦橋トップのレーダーを交換し、主砲が旋回できるように艤装品の位置を少しずらした位が改修ポイントです。ただ、完成間際に落として三脚マストを破損してしまい、直したものの歪みが残ってしまいました。
 塗装は、船体はネービーブルー。甲板はデッキブルー代わりのクレオス333。全体的に暗くなったうえにメリハリにかけてしまうという反省点を残しました。

 ■左砲戦中の「ペンシルヴェニア」とPTボート
 PTボートはキットのオマケです。「ペンシルヴェニア」は主砲が旋回し、実艦同様に3本すべて連動して上下するなど中々楽しめます。

 





















 ■要目
 ■排水量:40,605t(満)
 ■全長:185.32m
 ■全幅:32.38m
 ■出力:35,200馬力
 ■最大速力:20,8ノット
 ■乗員定数:1,300名
 ■武装:45口径35.6p3連装砲4基、38口径12.7p連装高角砲8基、40mmボフォース4連装機関砲10基、20mmエリコン機関砲51門

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