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ある女性士官が見た夜戦艦橋(1)


 1944年10月。マルタ島沖合。日英連合が上陸作戦を敢行し、制空権の奪回を狙ってマルタ島の飛行場をめぐる陸上戦が行われている場所から数キロの所に私はいた。
 
 「まったく、陛下の思いつきとやらに感謝だな。ノーデンフェルトからカナダ、日本、インド、ついに地中海だぞ。もう少しで地球一周だ」
 「タダで観光旅行ができると思えば良いのではないのですか?」
 私のぼやきに皮肉で返す少女と言ってもよい容姿の女性士官は、今回の任務で副官兼通訳としてきたターニャ・ドク少尉だ。
 そう、私、ノーデンフェルト海軍ルツィア・ヘンデルバンド少佐は、なぜか観戦武官として派遣されてしまったのだ。

 8月に行われた、日英ノーデンフェルト連合潜水戦隊「ハリケーン」による、ノルウエー沖の船団襲撃作戦。独の新兵器製作に用いられる戦略物資を積んだ輸送船の撃沈という所定の目的を果たしたものの、連合国側も多大な損害を受けた。
 私が艦長をしていた、「ネレイディア(U)」も、機関を損傷し船殻にもヒビが入る中破判定の損傷を受け、かろうじてカナダにたどり着いた。「ネレイディア(U)」は、日本から貸与された海大6型というクラスの大型潜水艦で、カナダでの修理はパーツ不足のため、長期化する見込みだった。
 そのためと、作戦報告のためノーデンフェルト皇国第一王女陛下に一度面会するために、日本へ。
 そこで待っていたのは、少佐への昇進と、「手が空いているなら前線の動向を見てきてくれないかしら」の一言で、地中海にいる日本艦に乗船しての観戦武官の仕事だったというわけだ。

 「さて、我々が乗るのは、あれか」
               

 …こうして、私は日本海軍第八艦隊所属の超甲巡「黒姫」に乗船することになったのだ。

 ■騒乱の海へ
 着任のあいさつも早々に、「黒姫」は出撃することになった。
 間が悪いことに、独伊仏空軍の猛攻で日英空母に損傷艦が相次ぎ、空母部隊は一時退避。
 その隙に、枢軸艦隊がマルタ島の飛行場を夜間砲撃するという情報が入ったためだ。

 出撃するのは、第八艦隊所属艦のうち無傷の「黒姫」「鳥海」。空母部隊の直援を一時外された「金剛」「利根」「大淀」。さらに第二水雷戦隊(ただし、駆逐艦の半数はあちこちからの寄せ集め)
 合同訓練をしたことが無い艦の集まりに、当時の苦しい戦況がうかがえた。しかし、どの艦も実戦経験豊富なのは頼もしいかぎりだった。
 
 

            



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