駆逐艦 丹陽1955
THE REPUBLIK of CHINA Destroyer TANYAO 1955
台湾海峡に君臨した最強の幸運艦
<使用キット>
A社「中華民国海軍旗艦 丹陽」
<実艦解説>
「丹陽」の履歴は、以前に製作した「丹陽1960」に掲載してあるので、その補講になります。
■武装
艦首一番砲は、12.7p連装砲です。これは、1944年に艦首を大破した駆逐艦「響」が応急修理時に撤去し、台湾で平射砲台になっていた物のようです。傷だらけになりながらも生還する幸運艦「響」から、無傷の幸運艦「雪風」に引き継がれた武装。不思議な縁を感じます。
後部は、長10p連装砲が2基。これも台湾で二次大戦中、防空砲台として使われていた物のようです。いずれもオリジナルの防盾を装備していますが、完全な砲塔型かシールド型かは、手持ちの写真では分かりませんでした。
レーダーは対水上用の物しか、この時は装備しなかったようです。対空射撃レーダーはおろか、九四式高射指揮装置のような対空管制装置も無いので、対空能力に関しては「雪風」時代と大差無いと思われます。
■「丹陽」をめぐる1955年時の状況。
では、「丹陽」の想定していたと思われる戦闘は、どんなものだったか。
それは、台湾の対岸で着実に戦力を整えていた、人民解放海軍(中共軍)との水上戦闘だったと思われます。
当時、解放軍では元英軽巡「オーロラ」を筆頭に、旧日本海軍からの艦艇(海防艦主体)とソ連から給与された艦艇を着実に整備していました。
1954年には、解放軍の魚雷艇が台湾側の護衛駆逐艦「太平」(元米エバーツ級「デッカー」)を撃沈するなど、小競り合いも相次いでいまいした。
台湾側は、「ベンソン・グレーブス」級駆逐艦3隻を除けば、3インチ砲装備の元「松」級、「エバーツ」級主体。「丹陽」は文字通り、台湾側の最強艦として艦隊旗艦を努めていたのです。
<模型解説>
今回は、初めてフルハルキットのWL化に挑戦しました。
まずは、船体側面のモールドを目安にニッパーで大まかに切断。次にデザインナイフとヤスリで整形。流用した「夕雲」級の船底版を付けてから、ひたすらにパテ盛&整形。
船体が形になるまでに、かなり時間がかかりました。WL化に伴う作業だけでなく、このキットはパーツの合いがいま一つだったこともあります。
次に、キットに無い救命筏や単装機銃などをPT社のパーツから流用。マストの形状は、「雪風」時代と明らかに異なるため、「ジョン・C・バトラー」級のものと換装。主砲の砲身も微妙でしたが、前部のみWLの共通武装セットから流用しました。
塗装は、写真を見る限り米海軍のメジャー22のままと判断。甲板はクレオス333、船体上部はクレオス308。下部はネービーブルーを明るく調色した物を使いました。
■「雪風」1945〜「丹陽」1960
タカラホビーの「雪風」(1945と復員船時)、「丹陽」1955、1960を並べてみました。
ここまで艦容が変化しながらも、常に一線で奮闘したのは「幸運艦」の面目躍如といったところでしょうか。
■要目
■排水量:2,050t(基準)
■全長:118.5m
■全幅:10.8m
■出力:52,000馬力(1945年時、丹陽時代には低下していると思われます。)
■最大速力:27ノット
■武装:12,7p連装砲1基、長10p連装砲2基、25o連装機銃8基、同単装1基